2013年9月30日月曜日

サムスングループで何が始まったのか?:サムスンこけたら韓国つぶれる

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●韓国の産業界は「サムスングループで何が始まったのか」との話題で持ち切り〔AFPBB News〕


JB Press  2013.09.30(月)
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38794

サムスングループで何が始まったのか?
ファッション事業移管、メディア幹部相次ぎスカウト

 2013年9月23日、サムスングループは、グループの母体企業である第一毛織で手がけているファッション衣料事業をサムスンエバーランドに売却すると発表した。
 サムスングループの発祥事業の移管という大事業再編だ。

 同じ日、韓国メディアはサムスン電子が朝鮮日報幹部などメディア幹部3人を役員として迎え入れると報じた。
 さらに27日には、情報システム会社のサムスンSDSが通信システム会社のサムスンSNSを合併すると発表した。
 相次ぐ動きに、韓国の産業界では「サムスングループで何が始まったのか」との話題で持ち切りだ。

■伸び悩む発祥事業をグループ内で移管

 第一毛織とサムスンエバーランドは、第一毛織のファッション衣料事業をサムスンエバーランドが12月1日付で1兆500億ウォン(1円=11ウォン)で買収すると発表した。

 第一毛織は1954年設立で、サムスングループの母体企業の1つだ。
 社名の通り、繊維会社として出発している。
 韓国を代表する衣料ブランド「ビンポール」などを育てたが、ここ数年はファッション衣料事業は伸び悩んでいた。

 特に、ユニクロやZARAの向こうを張って2012年に参入したSPA(製造小売業)が不振で、ファッション衣料事業は2013年4~6月期に営業赤字に転落していた。

 一方で、ここ数年、化学素材や電子材料などの事業を急速に拡大させていた。
 特に液晶フィルムやポリカーボネイトなどスマートフォン関連材料や部品事業が急成長していた。
 2013年1~6月期の売上高もこれら化学、電子材料事業が全体の7割を占めるようになっていた。

 第一毛織は上場企業で、2012年の売上高は6兆ウォン、営業利益は3200億ウォンで、営業利益率も5%を超え「まずまずの実績」とは言える。

■第一毛織が目標としているのは東レか?

 ただ、ここ数年、電子関連事業の売上高が急増して、一部投資家からは「ファッション衣料事業を整理して電子関連事業に集中すべきだ」との声も出ていた。

 第一毛織が目標としているのはかつての提携先である東レではないか。
 サムスングループの創業者で現在の李健熙(イ・ゴンヒ)会長の父親である李秉喆(イ・ビョンチョル)氏は、発祥事業である繊維事業の強化のため、1972年に東レと第一毛織の合弁でポリエステル繊維などを生産する第一合繊を設立した。

 李秉喆氏は、東レから技術だけでなく財務や人事制度も貪欲に吸収させた。
 サムスングループ内には、繊維から電子材料、炭素繊維などへ次々と「事業変身」を続ける東レを高く評価する声が今も根強い。

 というわけで、サムスングループの母体企業である第一毛織にとって、ファッション衣料事業は急速に「重荷」になってきていた。
 特に四半期ベースとはいえ「赤字」に転落したことは、グループにとって「緊急措置」が必要な事業になったということを意味した。

 サムスングループでは、2012年後半から第一毛織のファッション衣料事業についてさまざまな検討がされたようだ。
 韓国メディアによると、外部売却も検討したというが、それほど簡単ではなかったと思われるのが、ファッション衣料事業に強い関心を持っているのが李健熙会長の次女で第一毛織経営企画担当副社長の李敍顯(イ・ソヒョン)氏であることだ。

 李敍顯氏は、ニューヨークにありファッション分野の世界3大名門大学の1つと言われる米パーソンズ美術大学を卒業し、デザインや衣料ファッションに強い関心を持っていた。
 つまりファッション衣料事業は見ようによっては「オーナー家の事業」で短期的な収益だけを判断基準にして、簡単に外部に売却できる事業でもなかったのだ。

 では今回なぜ、サムスンエバーランドに売却することになったのか。

■オーナー家支配のカギを握るサムスンエバーランド

 サムスンエバーランドは、2012年の売上高が3兆500億ウォンでグループ内では決して規模が大きいわけではない。
 ゴルフ場やレジャーランドの運営、給食事業などを手がけている。だが、サムスングループ内では圧倒的な存在だ。
 というのも、非上場のサムスンエバーランドはグループ全体の支配構造の頂点に立っているからだ。

 サムスンエバーランドは、サムスン生命保険の大株主だ。
 このサムスン生命保険がサムスン電子やホテル新羅、サムスン火災海上保険、サムスン証券の大株主なのだ。

 李健熙会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は25%の株主を握る筆頭株主で、長女である李富真(イ・ブジン)氏と次女である李敍顯氏もそれぞれ8.37%ずつ出資する大株主だ。
 李富真氏はグループ企業であるホテル新羅の代表理事社長だが、サムスンエバーランドの経営戦略担当社長も兼務している。

 つまり、サムスングループの支配構造は、オーナー家→サムスンエバーランド→サムスン生命保険→サムスン電子など、という複雑な形になっている。
 オーナー家支配のカギを握るのがサムスンエバーランドなのだ。

 サムスンエバーランドはかねてレジャー、給食以外の業務への進出を検討していた。
 ファッション衣料事業は「やり方によっては十分収益が上がる」(韓国紙デスク)との見方もある。

 オーナー家が保有する非上場会社で、短期的な収益にばかり気を使う必要もない。
 2013年夏には5000億ウォン規模の社債も発行して買収資金も豊富に確保していた。そんなことから格好の案件だったようだ。

■サムスンSDSとサムスンSNSの合併で海外事業を強化

 9月27日には、サムスンSDSがサムスンSNSを合併すると発表した。
 両社ともグループ内の非上場企業だ。

 サムスンSDSはデータセンターの構築やデータ処理事業の運営などを幅広く手がけ、2012年の売上高は6兆1056億ウォン、営業利益は5580億ウォンというグループ内の優良企業だ。

 一方のサムスンSNSは、サムスン電子の通信機器などを構築するシステム会社で2012年の売上高は5124億ウォン、営業利益は543億ウォン。
 規模は小さいが、これまた優良企業だ。

 2社の合併の目的は、情報通信関連のシステム会社を合併して特に海外事業を強化しようということだ。
 サムスンSDSは優良企業だが、最近、経営努力だけではどうにもならない問題を抱えていた。
 「経済民主化」政策のあおりで、財閥系の情報システム会社が政府の情報アウトソーシング業務の入札への参加を規制され、国内業務が打撃を受けていたのだ。

 このところ海外事業強化に乗り出しており、通信分野に強いサムスンSNSを合併してシナジー効果を出そうということが直接の目的だ。

 一連の「グループ内M&A(合併・買収)」を機に、一部韓国メディアは李健煕会長の長男、長女、次女間での事業継承問題が一気に動き出すと報じている。

 こういう見方が出るのは、サムスンエバーランド、サムスンSDS、サムスンSNSはともにグループ内の優良企業でありながら非上場で、特に3人の持ち株比率が高いからだ。

■オーナー家の持ち株比率が高い企業の動きに継承の思惑も

 サムスンSNSの場合、李在鎔副会長が45.69%を出資している。
 合併によって李在鎔副会長のサムスンSDS株保有比率は今の8.81%から11.26%に高まる。

 このため、サムスングループの李健煕会長から3人の子供たちへの経営権継承問題に詳しい経済人の間ではかねてこの非上場3社の行方を注目する見方が強かった。
 この3社が一気に動き出したことで、「グループ内で本格的な継承作業が動き出した」との見方があるのだ。

 最もうがった見方は、非上場3社の企業価値を高めて、3人の子供たちの資産を増やし、将来サムスングループの系列企業の株式を買い増す際の「実弾」にするということだ。

 サムスンエバーランドやサムスンSDSの企業価値が高まれば、もちろん3人の資産も増えることになる。
 だがそれはあくまで結果的に、ということではないか。
 すでに3人ともかなりの株式を保有している。
 例えば、サムスンSDSが上場したとしてもオーナー家の人間が、簡単に持ち株を売却できるのか。

 さらに非上場グループ会社を使った「錬金術」に対してはメディアや一部市民団体が厳しい目を光らせている。
 そんなリスクを取ってまで、「露骨な」継承作業をするとは思えないのだが。

■「グループ内M&A」はグループリストラの号砲か

 すでに李在鎔氏はサムスン電子副会長で、サムスン電機、サムスンSDIなどを含めた「電子関連グループ」の経営に深く関与している。
 ファッション衣料事業の売却で第一毛織も「電子関連企業」になることはあっても、継承問題に大きな変化があるとまでは言い切れないだろう。

 次女の李敍顯氏はファッション衣料事業の移管に伴い第一毛織からサムスンエバーランドに「転籍」する可能性は大きいが、だからと言ってサムスンエバーランドを継承するわけでもなく、今回のM&Aだけで、何か大きな変動があるとは言えない。

 むしろ、今回のM&Aを機に、グループ内の本格的な事業再構築が始まる可能性はある。
 サムスン電子の突き抜けた高収益ばかり目立つが、サムスングループの他の企業の業績がすべて好調なわけではない。それどころか、赤字に陥っている企業も出ている。

 赤字とは言えなくとも中長期的な視点に立って「リストラ」が待ったなしの企業(事業)も増えている。

  「韓国経済新聞」は9月28日付の記事で、「サムスン石油化学と第一毛織との合併」「サムスン物産によるサムスンエンジニアリング株買い増し」の可能性を報じた。
 別の韓国紙のデスクも「重工業、建設、化学分野などで大胆な措置を取る可能性がある」という。
 今回の2つの「グループ内M&A」はグループリストラの号砲という見方だ。

 建設関連事業を手がけるサムスン物産とサムスンエンジニアリング、サムスン重工業の事業をどう整理するか。
 化学事業を急拡大させている第一毛織と他の化学関連企業をどう再編するかなどについては、韓国の産業界でも関心が高い。

■メディア出身者スカウトの狙い

 もう1つ、サムスングループ内外で注目を集めた人事があった。
 サムスン電子が、朝鮮日報、SBS(地上波放送)、文化日報など大手メディア出身者3人を役員としてスカウトしたのだ。

 朝鮮日報幹部(TV朝鮮報道副本部長)は企画担当専務、SBS幹部(報道本部副局長)は広報担当専務、ソウル新聞や文化日報出身者は広報担当常務に2013年10月に就任する。

 サムスン電子がメディア会社の幹部を、役員人事の時期でもないタイミングで一気に3人もスカウトするのはもちろん初めてで、その狙いに関心が集中している。

 ある大手紙幹部は、
 「グループに外部の風を入れようという試みだ。いずれも優秀な人材で、うまく活用できれば大きなプラスになる」
と読む。

 では、何のためにこうした人材をスカウトしたのか。
 この幹部は、
 「経済の両極化が進み、韓国内で財閥に対する風当たりが強まっている。
 グループ内だけで対応を考えるのではなく、もっと広い視野で考えようということだ」
と解説する。

 さらに「李健熙会長から3人の子供への継承作業も仕上げの段階に入っており、グループ以外の反応を慎重に見極めようという狙いもある」と語る。

■「ポスト李健熙会長」に向けた準備

 2013年8月、サムスングループと韓国の産業界を震撼させる出来事があった。
 李健熙会長が体調を崩し、入院したのだ。
 幸い、すぐに退院して、その後、アルゼンチンで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席するなど回復ぶりをアピールした。

 それでもサムスングループにとって「ポスト李健熙会長」に向けた準備は抜かりなく進めなければならない。

 グループ事業の再編と持ち株会社でファミリー企業であるサムスンエバーランドの経営強化、サムスンSDSによるサムスンSNS合併、さらに外部からの人材スカウトも、こうした準備作業の一環と言えなくはない。

 今後予想される再編策、年末にかけてのグループ役員人事、そしてスカウトした3人の役割。
 絶好調が続くスマートフォン事業の陰で、サムスングループでの動きが慌しくなってきた。



JB Press 2013.10.02(水)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38834

サムスンの後継候補の御曹司、投資家による厳しい品定め
(2013年10月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 この国には王室はないが、それに最も近いのはサムスンの創業者一族だ――。
 韓国の人たちは時折そんなことを口にする。
 そのため、その一族の長である李健熙(イ・ゴンヒ)氏が昨年、ただ1人の息子をサムスン電子の副会長職に昇格させた時には、王朝の継承が始まるとの見方が強まった。

 李健熙氏は26年近く前に実父の後を継いでサムスングループの会長に就任した。
 人前に出たがらないこの億万長者はそれ以降、同グループが建設業から生命保険業まで幅広く手がける世界最大級のコングロマリット(複合企業)に成長する舵取りを担ってきた。
 しかし、サムスングループという王冠の最大の「宝石」が、ハイテク企業としては世界一の売上高を誇るサムスン電子であることは明らかだ。

 サムスン帝国のほかの企業は、李健熙氏の2人の娘に引き継がれると見られているが、アナリストの大半は、サムスン電子は息子の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が率いることになると考えている。
 実際、李在鎔氏は成人してからの人生のほとんどをサムスン電子の社員として過ごしている。
 ところがサムスン電子については、スマートフォン(スマホ)の利益率に対する懸念を背景に株価が6月に入ってから11%下落しており、この株価下落は、同社がこれまでのような急成長を今後も持続できるのかという疑問を既に投資家が抱いていることを示している。

■サムスン帝国を急成長させた李健熙会長

 24万6000人を数えるサムスン電子の従業員のうち、71歳の李健熙氏本人に会ったことのある人はごくわずかだが、同氏の伝説に詳しい人は多い。
 同社が喧伝しているところによれば、携帯電話端末のビジネスに乗り出して間もないころ、李健熙氏の命令で巨大なかがり火がたかれ、不良品の端末が何万台もその中で焼かれたことがあった。
 開発者に警告を発することがその狙いだったという。

 最も崇められているのは、1993年にフランクフルトのケンピンスキーホテルで発令された「フランクフルト宣言」だ。
 同氏はここに幹部らを集め、「常時危機」体制として知られる経営スタイルを説き、「妻と子供以外はすべて変えろ」と命じたとされている。

 この容赦ないアプローチが正しかったことは、これまでの業績により証明されている。
 サムスンの創業者・李秉喆(イ・ビョンチョル)氏は、1938年にある地方都市で立ち上げた小さな会社を韓国最大級のコングロマリットに育て上げた。
 しかし、サムスンがメモリーチップやテレビ、携帯電話端末といった電子製品の世界市場で大手の地位を獲得するに至ったのは、2代目の李健熙会長が舵を握ってからだ。

 李健熙氏は社内で偶像視されているにもかかわらず、日々の業務には一定の距離を置いている。
 ソウルの経済界では同氏の健康不安説もささやかれているが、サムスンに近いある人物によれば、同氏は数カ月前から定期的にソウルの本社に出社するようになっており、朝6時から働いているという。
 ただ、会長としての仕事のほとんどは自宅の隣にあるプライベートオフィスでこなしており、幹部が定期的にそこにやって来て相談している。

 2008年の不正資金問題を受けて李健熙氏が会長職を辞任した後も、会社の業務は通常通り続けられた。
 同氏は辞任後に脱税の罪で有罪判決を受けたものの、そのほぼ2年後に韓国大統領から恩赦を受けて復帰を果たしている。

 かつてサムスンの戦略部門に籍を置いていたサンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、マーク・ニューマン氏は「会長の役割の特徴は、本当に表に出てこないことだ」と言う。

 そのおかげで投資家は難しい問題に直面している。
 サムスン電子の近年の成功のうち、どこまでが李健熙氏個人の手柄で、どこまでが韓国トップクラスの優秀さと野心を兼ね備えた経営幹部たちの手柄なのか、という問題だ。

 「サムスンはこの20年で、プロフェッショナルが非常にシステマチックに意思決定を行うプラットフォームを作り上げた。
 その点ではアップルに似ていない」。
 クワッド・インベストメント・マネジメントのファンドマネジャー、マルチェロ・アーン氏(ソウル在勤)はこう指摘する。
 「だから私は(同社の事業承継について)それほど心配していない」

■父親より外交的な李在鎔氏、米国には強い人脈

 しかし、事業承継が間近いことを示す兆しが1つでも出てくれば、跡継ぎとしての訓練を子供時代から受けてきた次期会長の資質に市場の注目が集まることは確実だ。
 李健熙氏の長男・李在鎔氏は現在45歳。
 父親よりも社交的な性格で、慶應大学大学院とハーバード・ビジネス・スクールでビジネスを学んだことから英語と日本語にも堪能だ。

 李在鎔氏にとっての最初の重職は、2007年に任じられた「最高顧客責任者」だった。
 この変わった名前の役職はきっと閑職だろうと考えた評論家たちは冷笑を浮かべたが、実際はそうではなかった。
 この役職名は、同氏がアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏からの連絡を受ける窓口になることを意味していたのだ。

 スマホ関連の特許を巡って苦々しい法廷闘争を展開したにもかかわらず、アップルは現在もサムスンの部品事業の大口取引先であり、2011年に行われたジョブズ氏の葬儀に招かれたアジア人経営者は李在鎔氏だけだった。

 サムスン電子の投資家としては、これが外国企業との関係をうまくこなす才能の表れであることが望まれる。
 同社が電子機器を低価格で輸出する企業から、世界の顧客、サプライヤー、提携先の複雑なネットワークを管理する企業になった今、そうした才覚は極めて重要な特性だ。

 例えば、サムスンのスマートテレビへの進出は、同社のテレビ事業が今ではハードウエアの生産だけでなく、コンテンツプロバイダーとのパートナーシップの育成にも依存していることを意味する。

 サムスンに近い関係者によると、李在鎔氏は米国の政財界のエリートと交流があり、その人脈のおかげでアマゾンやネットフリックス、ベライゾンなどからサムスンのスマートテレビ事業への支持を得ることができたという。

■創業家内での継承に批判も

 だが、韓国国内では、サムスン電子の持ち株比率が5%にも満たず、子会社同士の入り組んだ株式持ち合いを通じて支配権を維持している創業家の内部で会長職が受け継がれることへの批判もある。

 李健熙氏は継承を円滑にする対策のために、2009年、サムスンの別の子会社の債券を息子に違法に売却した共謀罪などで有罪判決を受けている。

 一部の投資家に言わせると、李在鎔氏の手腕はまだ証明されていない。
 数年前、同氏がサムスンのロジックチップ事業の責任者になるとの噂があったものの、実際に事業部門を率いた経験は10年以上前、短命に終わった電子商取引事業のトップを務めただけだ。

 「個人的には、JY(李在鎔氏の愛称)は1度も力量を示したことがないと思う」。
 かつてサムスンに投資していたあるベテラン投資家はこう話す。
 「すべては彼に与えられたものだ。懐疑的な見方はたくさんある」

 李在鎔氏を知る一部の人は、そうした批判は不当であり、同氏はスマホの「ギャラクシー」シリーズを含め、最近の成功に大きくかかわってきたと言う。
 あるサムスン元幹部は、李在鎔氏は既に最高経営責任者(CEO)の職務を引き継いでおり、父親は非常勤の監督役を担っていると言う。

■次期会長が直面する試練

 いずれにせよ、李在鎔氏は実権を握った時に、厳しい試練に直面することになる。
 最近の株価下落は、成熟化するスマホ市場へのサムスンの依存に対する不安感を反映している。
 同社はバイオテクノロジーや太陽エネルギーなど新たな成長分野を特定しているが、社内関係者も、新規事業が会社の収益に大きく貢献するようになるまでには何年もかかると認めている。

 「サムスンはあまりに成功してきたから、同社のこれまでの行いを批判するのは難しい」。
 ハーミーズ・ファンド・マネジャーズで新興アジア諸国が対象のポートフォリオを運用するジョナサン・パインズ氏はこう話す。
「だが、チェスのように、誰もが次の一手に目を向けている」

By Simon Mundy
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 韓国企業といえば、サムスンと現代自動車。
 この2社は韓国の心臓ともいえる。
 現代自動車は技術革新に遅れ、旧来技術では中国の追い上げを受ける可能性が大きく、また社内がゴタゴタしていて、将来的な見通しが暗くなりつつある。
 とすれば、サムスンこそが韓国の心臓であるとともに、頭脳でもあるということになる。
 ここがコケたときは、韓国が潰れるときでもある。
 そんな奇形な経済構造にしてしまった政治家たちの罪は大きいのだが。
 よって、周囲の目は必然的にサムスンの動きに集中し、一喜一憂する。
 上の2本の記事がそのことを証明している。


聨合ニュース 2013年 10月 01日(火)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2013/09/30/0500000000AJP20130930003600882.HTML

世界企業ブランド価値 サムスン8位・現代自43位

【ソウル聯合ニュース】
 サムスン電子のブランド価値が世界8位になった。
 現代自動車は順位が10段階上がり、初めて50位内に入った。

 米コンサルティング企業インターブランドが30日に発表した世界的企業のブランド価値ランキングによると、「ベストグローバルブランド2013」に韓国からサムスン電子、現代自動車、起亜自動車の3社が選ばれた。

 現代自動車はブランド価値が90億ドル(約8807億円)と20%増え、順位は昨年の53位から43位に上がった。
 起亜自動車も15%増加の47億ドルで昨年の87位から83位に上昇した。

 9年連続100位内にランクインした現代自動車は今年のブランド価値が2005年の35億ドルと比べて160%増加し最も成長したブランドとなった。
 グローバル自動車企業の中でもアウディのブランド価値を抜いた。 

 昨年初めて100位内にランクインした起亜自動車は2007年にデザイン経営を宣言し、6年で406%のブランド価値成長を成し遂げた。 

 現代・起亜自動車の関係者は
 「2社のブランド価値の飛躍的な上昇はグローバルブランドキャンペーンをはじめとして地域ごとに異なるマーケティング展開や社会貢献活動などで高まったグローバル市場での位置が反映されたもの」
と話した。

 サムスン電子のブランド資産価値評価額は396億ドルで昨年の329億ドルより20%増加した。
 順位も昨年の9位から一つ上がった。市場をリードする製品の発売や積極的なグローバルブランドマーケティング活動の成果と分析される。

 サムスン電子は昨年初めて入った10位内に2年連続ランクインし、半導体市場での最大のライバルであるインテルを抜いた。 

 サムスン電子の沈秀玉(シム・スオク)グローバルマーケティング室長は
 「ブランドに対する認知度や人気を高める段階から、消費者が熱望するブランドに生まれ変わるために昨年新たにブランドの理想を掲げた」
と話した。

 トップ100社のブランドの総価値は1兆5000億ドルで昨年より8.4%増加したが、ランクインした韓国の3社はこの平均成長率を大きく上回る勢いをみせた。

 上位圏のグローバル企業の順位の変動も激しかった。
 アップルが983億ドルのブランド価値を記録し、コカ・コーラを抜いて1位になった。
 コカ・コーラはインターブランドがブランド順位の集計を始めた2000年から13年間守ってきた1位の座から初めて転落した。

 グーグルが933億ドルで2位になりコカ・コーラは792億ドルで3位にランクされた。
 昨年8位だったインテル(373億ドル)はサムスン電子によって9位に下がり、トヨタ(353億ドル)が10位を記録した。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/10/02 10:15
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/10/02/2013100201032.html

サムスン一家の相続争い、先代会長の遺志めぐり対立
長男の李孟煕氏、控訴の趣旨を変更し訴訟額を大幅増額

 サムスン・グループの創業者、故イ・ビョンチョル元会長が残した他人名義の相続財産をめぐり、長男の李孟煕(イ・メンヒ)氏(CJグループ元会長)=82=と三男の李健煕(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長(71)が繰り広げている訴訟の控訴審で、父親の遺志をめぐり、両者が真っ向から対立した。

 ソウル高裁民事14部(ユン・ジュン裁判長)で1日行われた第2回口頭弁論で、孟煕氏は「サムスン電子やサムスン生命など、グループ内の中心的な会社を受け継いだ健煕氏の『単独相続』が、父親の遺志に反する」として攻撃した。これに対し健煕氏は「父親の遺志に反してはいない」と反論した。

 この日、孟煕氏側の弁護士は「承志会」に言及した。ビョンチョル氏の死後、サムスン・グループ内の混乱を収拾する役割を果たした同会は、孟煕氏の妻のソン・ボクナムCJグループ顧問と、ビョンチョル氏の長女でハンソル・グループ顧問のインヒ氏、三男の健煕氏、四男で新世界グループ会長のミョンヒ氏、元秘書室長のソ・ビョンヘ氏の5人により構成されていたという。

 孟煕氏側の弁護士は「先代会長(ビョンチョル氏)は承志会を通じ、健煕氏の一方的な経営を統制しようとした。とりわけ、ソ・ビョンヘ元秘書室長を承志会に参加させたことは、健煕氏に対する信頼が絶対的ではなかったという事実を裏付けるものだ」と主張した。

 これに対し健煕氏側は「承志会はむしろ、健煕氏によるサムスン・グループの経営権の引き継ぎを前提とした組織だった。
 先代会長が生前、健煕氏にグループの支配権や経営権を譲ったことに、争いの余地がないことは明らかだ」と主張した。
 また「これは孟煕氏が自叙伝でも認めた事実だ。主な系列会社は健煕氏に譲り、残りの小規模な系列会社はほかの兄弟に、食べていけるだけの財産として譲るというのが、先代会長の鉄則だった」と付け加えた。

 孟煕氏はこの日、控訴の趣旨を変更し、訴訟額を96億ウォン(約8億7500万円)から約1400億ウォン(約128億円)に増額した。
 これにより、孟煕氏は控訴審に必要な印紙代として6億3000万ウォン(約5700万円)を裁判所に納めた。

 高裁は来月5日に行われる第3回口頭弁論で、相続権の侵害がどのように行われたのかなどを立証するよう注文を付けた。



【「底知らず不況」へ向かう韓国】


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