2013年8月16日金曜日

中国バブル崩壊序章、習近平政権「袋小路」:引きずられる韓国

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●連携深める中韓 (6月の首脳会談、提供:AP/アフロ)


WEDGE Infinity 2013年08月16日(Fri)  WEDGE編集部
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3066

中国バブル崩壊序章:習近平政権「袋小路」
引きずられる韓国

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 投資主導の成長の裏に見え隠れする不良債権。
 中国経済に危機シグナルが点る。
 背後には、政権交代に伴う綱紀粛正があり、簡単に解決できる問題ではない。
 隣国の動揺にどう備えるか。
 企業も投資家も身構える時だ。
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 7月上旬、モスクワに20カ国・地域(G20)サミットの事務方が集まった。
 話題の中心は米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和の出口戦略だったが、関係者がもどかしさを覚えた懸念事項がある。
 中国のシャドーバンキング(影の銀行)問題だ。

 どの位の震度を持つリスクなのか。
 事務方が知りたいのはその相場観なのに、中国側出席者からの発言は要領を得ない。
 6月下旬に上海銀行間取引金利(SHIBOR)の金利が2ケタに跳ね上がったことは異変を予感させる。
 にもかかわらず、木で鼻を括った説明に終始したのは、どういうわけか。

 ほかでもない。
 この問題は官僚の事務方が取り扱えるような代物ではないということだ。
 発足直後の習近平政権はバブル潰しに動いている。
 銀行融資を規制しても、中国版ノンバンクであるシャドーバンキングを通じて資金が流れ続けるようでは、不動産などのバブルは止まらない。
 そう考え、中国人民銀行(中央銀行)からのマネーを絞ったのだ。



 7月5日に明らかになった国務院(日本の内閣に相当)の通達は、内外の金融関係者に衝撃を与えた。
 各省庁と地方政府に出した通達は断じる。
 「今の金融政策を続け経済成長が減速したとしても、金融緩和に転じることはない」。
 景気が減速していることから、緩和に転換するのでは、との希望的観測を一蹴したのだ。

■日米のバブル崩壊前とよく似ている

 まさにバブル潰しに奔走した日銀の三重野康総裁(当時)を彷彿とさせる内容である。
 日銀は1989年から90年にかけて5回にわたって公定歩合を引き上げ、金利水準は2.5%から6.0%に跳ね上がった。
 90年初以来、株価は暴落していたのに、三重野日銀は容赦しなかった。
 日銀のみならず、大蔵省(現財務省)もバブル潰しに躍起となり不動産関連業種への融資規制を導入した。
 結果は不動産バブル崩壊を引き金にした「失われた20年」である。

 忘れてならないのは、当時のマスコミも一般大衆も「平成の鬼平」に拍手喝采を送っていたことだ。
 その光景は今の中国にそのまま当てはまる。
 政権に就いた習近平国家主席(共産党総書記)が真っ先に行ったのは、綱紀粛正の大号令である。

 6月22~25日の共産党中央政治局会議では、「8つの規定の精神を断行する」と檄を飛ばした。
 8つの規定とは、過度な接待の防止などを柱とする行政と党内の引き締め策だ。
 28~29日の全国組織工作会議では、賄賂で官職を手に入れる「官職売買」に対する厳重な処罰を強調した。

 いずれも建前としては正しい。
 中国では急速な経済成長に伴い絶望的なまでに貧富の格差が拡大し、
 共産党の幹部であるかどうかで富と権力を手に入れられるかが決まる。
 そんな不公正な社会に民衆の不満は爆発寸前である。
 習氏は自らが党幹部の息子である「太子党」の一員であるだけに、そうした矛盾をひしひしと感じ、胡錦濤・温家宝政権が手を付けられなかった腐敗の問題に、あえてメスを入れようとしている。


●習近平政権の綱紀粛正で中国の高級酒市場が打撃を受けている(「五粮液」は高級酒の一つ、提供:Imaginechina/アフロ)

 悩ましいのは、そうした綱紀粛正策が今の中国経済にとって、とてつもない重荷になりかねないことである。
 すでに接待の舞台だった高級料亭や袖の下に使われていた高額商品の売り上げは、今年春以降、急減している。

 業界団体のスイス時計協会によると、今年1~3月期の対中輸出は前年同期に比べて25%あまり減った。
 米経済紙ウォールストリート・ジャーナルによれば
 「中国政府の汚職取り締まりも一部の高級品の売り上げを圧迫しており、なかでも時計は特にやり玉に挙げられている」
という。

 中国のネット市民が、しゃれた腕時計を身につけた役人の写真をアップすることを趣味にしているのだからたまらない。
 現に詰め腹を切らされた役人さえいる。
 魔女狩りのような綱紀粛正のムードが、景気を下押しするのは明らかだろう。

 こうした経済の逆回転が、贅沢品の消費にとどまっているなら、まだ良い。
 最大の問題は、中国経済のアキレス腱である金融システムを直撃するリスクが高まっている点にある。
 シャドーバンキングと呼ばれるノンバンクに矛盾は集中しているが、
 シャドーバンキングは「理財商品」と呼ばれる財テク商品と表裏の関係にあるだけに、事は厄介だ。

 理財商品とは一種の投資信託であり、銀行の窓口でも販売されている。
 銀行業監督管理委員会によれば、12年末の発行残高は7.1兆元
 発行されている商品数は3・2万件にのぼる。
 残高全体のうち、個人投資家が62%に当たる4.4兆元を保有し、機関投資家の32%や富裕層の6%をはるかに上回っている。

 低利の銀行預金では飽き足らない一般大衆が理財商品の主な保有者なのだ。
 満期は1カ月未満から2年以上まであるが、
 「投資家は満期前の解約権を有しない」(野村総合研究所)
のが、この商品の肝である。
 「銀行の窓口で売っていたから安心」
と信じていた購入者は焦り始めている。

 理財商品の運用対象資産が焦げ付けば、資金の償還も覚束なくなるからだ。
 普通の投資家なら商品が満期を迎えた時点で現金に換え、継続投資など金輪際行わないはずだ。
 ならば、理財商品の満期はどの位の長さなのか。12年末時点でみると、
 期間1カ月以上3カ月未満が全体の60%、3カ月以上6カ月未満は22%となっている。

 向こう半年以内に全体の8割以上が満期を迎える勘定である。
 理財商品の資金の運用先であるシャドーバンキングは、資金の蛇口が急速に細っていくことが予想される。
 リーマン・ショックの1年前の07年8月に、米住宅ローンを基に組成した投資信託が解約停止に陥ったパリバ・ショックが再来するのではないか。
 そんな懸念がくすぶっている。

 英米のメディアに中国経済の「ハードランディング(剛着陸)」懸念が報道され始めたのも、このためだ。
 目端の利く米投資銀行、ゴールドマン・サックスは、保有していた中国工商銀行の株式をすべて手放した。
 危ない船から逃げ出したのだ。

■日本は慌てる必要なし

 「中国経済がこけると相当な波紋が広がりかねない」。
 ちょっと前まで中国経済をヨイショしていたエコノミストの多くは、手のひらを返したようにそんな警戒論を唱えている。
 そうした懸念はどの程度妥当か。

 世界全体の経済成長に占める中国の割合(寄与率)をみると、リーマン・ショックが起き先進国が落ち込んだ08年には、実に39.5%に及んだ。
 10年と11年の寄与率はやや低下し、それぞれ18.1%、20.8%となっている。
 世界の成長の5分の1は中国のお蔭、といえる。
 その意味で、中国が一度に腰折れするような事態は、避けたいところである。

 とはいえ、11年当時と比べて世界経済に変化が起き出したのも確かである。

★.ひとつは、シェールガス革命や住宅バブル崩壊の調整過程の進展に伴って、米経済が復調しだしたことだ。
 米金融緩和の出口戦略が俎上に載り始めたのも、米経済が持ち直してきたからにほかならない。

★.もうひとつは、この日本である。
 安倍晋三政権が大胆な経済再生策を打ち出したのを機に、長らく低迷していた経済が息を吹き返しだした。
 今のところ金融緩和による円高是正が牽引役だが、米政府が円安を面と向かって批判する様子はない。
 軍事面などで中国が米国にタテを突きだしたことで、持ち駒である日本の国力を回復させた方が得策と考え始めたのだ。

 日本にとっても、昨年9月に激化した尖閣摩擦は、不幸中の幸い
といえるかも知れない。
 尖閣摩擦の前まで、日本企業の経営者は
 「中国需要を取り込む」との強迫観念にかられ、対中直接投資のアクセルを踏んでいたからだ。
 その間、米欧などは対中投資を減らし気味にしていたというのに、「遅れてきた青年」のような中国幻想に捕らわれていたのである。

 尖閣ショックを機に、さすがの経営陣も目を覚まし、対中投資を抑制しだした。
 危ういかな、昨年秋までのような勢いで、中国の内陸部への投資やコンビニの全国展開に踏み切っていたら、大手の自動車メーカーや流通企業の屋台骨が揺らいでいたかもしれない。

 「中国の消費市場が世界一になる」との指摘は依然として多い。
 それでも、対中投資に際しては「いつ放棄させられるか分からない」とのリスクが、幅広く認識されるようになったのは間違いない。

 日本にとって救いなのは、米経済が上向きだしたお蔭で、対中輸出の落ち込みを対米輸出が埋めてくれたことだろう。
 今年1~5月には対米輸出額は対中を上回った。
 日中関係の悪化に伴う日本の実質国内総生産(GDP)の落ち込みにしても、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「最大0.1%程度(5000億円強)」と試算する。

 中国が生産・販売拠点として期待できないなら、インドネシア、タイなどASEAN(東南アジア諸国連合)市場がある。
 尖閣ショックを機に、そんな当たり前の事実が明らかになったことで、経営者や投資家は中国経済のリスクに対し、比較的平静に構えている。

■中国と一体化する韓国の危うさ

 そんななか、国を挙げて中国に突進している隣国がある。韓国である。
 朴槿恵大統領の訪中は安全保障も経済も中国に委ねようという、かの国の姿勢を遺憾なく示した。
 70人を超える経済使節団の規模は先の訪米時の52人も上回る。

 韓国の中国向け輸出額は同国の輸出全体の25%を占め、中国がくしゃみをすれば風邪をひく。
 両国は12年に2150億ドルだった貿易総額を15年までに1.4倍の3000億ドルに引き上げる目標を掲げた。
 両国で自由貿易協定(FTA)を結びたいようだが、韓国のすり寄りが際立つ。

 韓国の対中投資額は565億ドルと、中国の対韓投資規模の12倍を超える「片思い」である。
 韓国のアキレス腱である外貨繰りでも、中国とのスワップ(通貨融通)に事実上頼っている。
 今回の大統領訪中で韓国は中国内陸部への投資をうたう一方、スワップの強化を懇願したが、
 それは韓国という国そのものが中国に飲み込まれるかのような事態である。

 日本では中韓連携に対する警戒感も強いが、 
 韓国がきしむ中国経済のつっかい棒になってくれるなら、むしろ感謝すべきだ。
 米有力エコノミストは「仲良く下落する中韓両国の株式」に注目する。
 両国が共倒れするような事態はまだ少し先かも知れないが、その間に日本自身の経済立て直しに本気になって取り組むべきだろう。

◆WEDGE2013年8月号より


 よく言うね、
 「韓国がきしむ中国経済のつっかい棒になってくれるなら、むしろ感謝すべきだ」
 だが、そういう見方もあるのだなと初めて知った。
 韓国が中国を一時だが支えることもあるだろうが、おそらく長期には支えられない。
 ということは、韓国は中国の低下とともに一蓮托生の波に乗っていくことになる。
 もはや、自立的な経済運営は出来なくなるということである。
 確かに今はいいが、これからどうなっていくのか、選んだ道の先行きなど誰にもわからない。
 後日、結果が出たときに、その選択の評価もきまるのであろう。
 いま、韓国人の誰もがもろ手で中国にすりよっている。
 後日、「私は反対だった」、などとは言えない。
 



【「底知らず不況」へ向かう韓国】


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