2013年6月17日月曜日

迷走、迷走、また迷走:韓国型ロケットと宇宙開発




朝鮮日報 記事入力 : 2013/06/17 11:17
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/17/2013061701221.html

【社説】宇宙ロケット開発、急ぐことが重要なのか

 韓国政府が、初の韓国製宇宙ロケットの打ち上げ時期を、当初の目標の2021年から2年前倒ししようとしたが、原点に戻って検討し直す意向を固めた。
 見込んでいた1兆5000億ウォン(約1260億円)の予算があまりにも少なく、また技術開発に要する時間も足りないと判断したためだ。

 韓国製ロケットは、15トン程度の実用衛星を地上600-800キロ上空に打ち上げるのに用い、3段式ロケットとする計画だ。
 2021年に打ち上げに成功した場合、25年には月面着陸機を打ち上げるというのが政府の当初の計画だった。
 だが昨年末の大統領選挙で、朴槿恵(パク・クンヘ)候補(当時)が
 「2020年に月に太極旗(韓国国旗)をはためかせる」
と主張したため、時期を前倒ししたものの、結局本来の計画に戻ったというわけだ。
 予算が不足したためだというが、仮に予算の問題がなかったとしても、宇宙ロケットは土木工事の工期を短縮するように、無条件で早く作ることが決していいことだとはいえない。

 韓国は1990年代にも、宇宙ロケットを独自に開発しようとした。
 だが、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「テポドン」発射(北朝鮮は人工衛星の打ち上げと主張)に刺激を受けた韓国政府が2002年、技術の中核となる1段目ロケットをロシアから購入し打ち上げるという方針に転換した。
 これが「羅老号」の打ち上げプロジェクトだ。
 だがロシアは韓国に対し、1段目ロケットに関する技術を全く提供しなかった。
 2回にわたる羅老号の打ち上げ失敗を受け設置された調査委員会の韓国側の専門家たちも、ロシア製のエンジンには近付くことさえできなかった。
 完成品の導入という容易な方法に期待する余り、ロケットの開発に必要な燃焼実験を行う場所も建設できなかった。
 一過性のイベントにすぎないロケットの打ち上げ
のために、韓国の宇宙産業は事実上10年もの歳月を無駄にしたことになる。

 宇宙ロケットは、精密機械や電子部品、通信、コンピューター、新素材、人間工学など、最先端の技術を基にする、総合的な産業によって生み出される製品だ。
 宇宙技術を発展させるためには、航空技術の基盤も強固にする必要がある。
 十分な設備も経験もない韓国が、宇宙ロケットの開発を2-3年も前倒しするというのは、誰が見ても無理があった。
 当初、2021年に計画していた韓国製ロケットの開発目標も設計や製作、実験など数千もの段階が全てうまくいくという楽観的な見通しが根拠になっている。

 すでに1960年代、人間が月面に降り立った状況の中、ロケットの打ち上げは何年か早く実施するのではなく、丹念に技術力を蓄積させていくことが重要だ。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/06/15 09:08
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/15/2013061500485.html?ent_rank_news

韓国独自開発ロケットの足引っ張る資金
打ち上げ時期2年繰り上げならさらに7000億ウォン
従来の日程通りでも予算大幅不足

 韓国の独自技術で作られた初の宇宙ロケットとなる「韓国型発射体(韓国型ロケット)」打ち上げ時期
は政治的な理由で2年繰り上げられたが、再び本来予定されていた時期に戻る可能性が高まった。
 専門家は
 「(韓国初の人工衛星搭載ロケット)『羅老号』(KSLV-1)開発失敗の前轍(ぜんてつ)を踏まないよう、宇宙ロケット開発は科学的な論議だけで進められるべきだ」
と口をそろえる。

 韓国型ロケットは重さ15トンの実用衛星を地上600-800キロの上空に打ち上げることができる3段宇宙ロケットで、当初は2021年に打ち上げられる予定だった。

 ところが、昨年12月6日に当時の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領候補(現大統領)がテレビ討論会で「2020年に月に太極旗(韓国国旗)を掲げる」と公約、打ち上げ時期繰り上げを打ち出した。
 このため未来創造科学部(省に相当、以下、未来部)は今年4月の大統領業務報告で、公約実践のため韓国型ロケットの開発計画を21年から19年に繰り上げると発表した。

 それにもかかわらず開発時期が元に戻ることになったのは予算不足のためだ。
 未来部は打ち上げ時期を2年繰り上げるのに7000億ウォン(約584億円)程度の追加予算がかかると見込んでいる。
 しかし、現在のところ追加の予算どころか従来の時期通りに打ち上げるための予算も大幅に不足している。

 パク・テハク韓国型発射体事業団長は14日
 「昨年まで支援されたロケットの開発予算は当初計画の47%にとどまっている。
 今年は補正予算で大幅に増えたが、それでも確保しているのは必要予算の70%程度だ」
と述べた。

 未来部のイ・サンモク第1次官も
 「このほど発刊された『国政課題』資料からロケット開発の時期が除外されたのは、予算確保の面で大統領公約の実現が可能かどうか再検討する必要があったから」
としている。

 専門家たちは
 「ロケット開発時期を無理に繰り上げれば、韓国型ロケットは『第2の羅老号』になりかねない」
と懸念していた。
 羅老号が10年以上も足踏み状態にあったのも、金大中(キム・デジュン)政権時に大統領府が打ち上げ時期繰り上げを指示したためだった。
 北朝鮮のテポドン・ミサイル発射に刺激され、大統領府の圧力で政府は02年、時間がかかる独自開発ではなくロシアの技術導入に方向転換した。
 今回も昨年12月に北朝鮮の「銀河3号」が発射されたことからロケット開発時期繰り上げ論が取りざたされるようになった。

 韓国型発射体事業団は現在、エンジン試験施設の構築やエンジン予備設計を進めている。
 来年8月の予備設計が終わり次第、実際の製作図面設計に入る。
 事業団職員約190人とサムスン・テックウィン、現代ロテムなどの企業側人材約50人が初期設計から共に開発に当たっている。



 ロケット開発の一方に戦闘機(KFX)開発がある。
 自前でロケットすら開発できないのに戦闘機(KFX)を開発できるのであろうか。


朝鮮日報 記事入力 : 2013/06/23 08:42
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/23/2013062300060.html

【コラム】先端兵器の国産化は「創造経済」のエンジン

 今月11日午後、ソウル市竜山の戦争記念館にユニークな兵器が登場し、通りすがりの人々の注目を集めた。
 昼用・夜用の映像装備や機関銃などで武装した無人ロボット車両、重さ数十キロの荷物を背負っても軽々と動ける「スーパーマン」になれる「筋力増強ロボット」、鳥そっくりの小型無人偵察機MAVなどが展示されていた。

 これらのロボットは、朴槿恵(パク・クンヘ)政権が国防無人・ロボット技術を創造経済の成長エンジンに選んだことを受け、防衛事業庁や国防科学研究所などがコンセンサス形成のため開催したシンポジウムで展示されたものだ。

 これに先立ち、朴槿恵大統領は先月22日、初の韓国製機動ヘリ「スリオン」の戦力化記念行事に出席し
 「今こそ韓国の防衛産業が、民間のクリエーティビティーと結合し、創造経済の花を咲かせる中心動力になるべき
と強調した。
 韓国軍や防衛産業界、学界では、こうした動きに大きな期待を抱き、前向きに考えている。
 これまで、兵器を作る防衛産業は、民間分野への寄与がない消耗的な存在だと誤解されるケースが多かったからだ。

 しかし同時に、一部の事業に対する現政権の態度を根拠として
 「創造経済と国防を結び付けようという意志を韓国政府がどれだけ強く持っているかはまだ分からない」
という疑念も一部で浮上している。

 代表例が、韓国型戦闘機(KFX)開発事業の問題だ。
 KFX事業は、F4・F5など老朽化した戦闘機を代替するため、
 F16よりやや性能が高い中間クラスの戦闘機を独自に開発し
120機配備するという計画だ。
 2001年に本格的な検討が始まって以来、これまで約10年かけて、韓国開発研究院(KDI)などで5回にわたり妥当性の検討が行われた。
 本格開発前の先行開発を意味する
 「探索開発」には、昨年までに韓国440億ウォン(現在のレートで約37億円、以下同じ)、
インドネシア110億ウォン(約9億円)の「計約550億ウォン(約46億円)」が投じられた。
 ところが李明博(イ・ミョンバク)政権は昨年末、事業の妥当性評価が再度必要だとして開発予算を大幅に削減、研究機関に検討を依頼した。
 現政権になっても、韓国政府当局のあいまいな態度には大きな変化がないらしい。

 これに対して国防科学研究所(ADD)などは、
 「6兆ウォン(約5000億円)」を投資して韓国型戦闘機を開発すれば、海外から直接購入する場合に比べ5兆ウォン(約4200億円)節約でき、19兆ウォン(約1兆6000億円)の産業波及効果、4万-9万人の雇用創出効果があると主張している。
 しかし反対派は、
 韓国の技術力や輸出の可能性などを総合的に考慮すると、韓国製戦闘機の開発は失敗する危険性が大きい、
と反論している。

 こうした中で興味深いのは、戦闘機を使用する韓国空軍の態度の変化だ。
 韓国空軍は当初、韓国型戦闘機の開発に否定的だった。
 ところが1-2年前から、正反対の流れに変わった。
 韓国空軍のある将官は
 「F15K、F16など輸入戦闘機を使っているため、海外の業者が修理用パーツの価格を釣り上げてくる上、軍の希望時期に合わせた速やかなパーツ供給がなされないケースが多く、韓国製戦闘機の開発を望むようになった」
と語った。

 戦闘機開発には天文学的な額の資金が必要なだけに、慎重にアプローチする姿勢が重要だ。
 しかし、韓国政府が創造経済と国防の中心事業になり得る韓国型戦闘機に対し、これ以上あいまいな態度を示すことは望ましくないと指摘されている。
 韓国政府が強調する創造経済とは「ファストフォロワー(素早い追撃者)」から「ファーストムーバー(市場の開拓者)」に変身するということだと思う。
 韓国政府が、ファーストムーバーとして合理的決定を下すことを期待する。


 民間の産業開発が頭打ちになった今、韓国は創造エンジンとやらで軍事への傾斜を強めている。
 軍事開発ははっきりいって金食い虫である。
 リターンが非常にわずかしかない。
 余裕がないかぎりやるべきことではない。
 過去にたった「46億円」の研究開発しかしてこなかったものに、「5,000億円」もの資金を投下してまともな開発のプロセスを組めるのであろうか。
 ちょっと考えればすぐにわかることである。
 奇形構造によって民生部門が失速しつつある今、国を引っ張るエンジンとして軍事に目をつけ、それを「創造エンジン」と名付けたのはいいが、あまりにも金がかかりすぎ、また成果が暗中にあって見通しがつかないとなると、ふんだり蹴ったりになる。
 新たなエンジンを自らの手で作るには韓国には荷が重すぎる。
 思いつきで「創造エンジン」なる用語を作ったが、それ以上には進めない。
 日本と距離を置くようになったいま、為すべきことがわからなくなり、どこへ向かうべきか、迷いに迷っているのが今の韓国であろう。
 



【「底知らず不況」へ向かう韓国】



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