2013年5月8日水曜日

円安による打撃:韓国の価格競争力を粉砕、赤字企業の続出へ

_



朝鮮日報 記事入力 : 2013/05/08 13:11
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/05/08/2013050801180.html

韓国企業の価格競争力を飲み込む円安の波

 円の下落が加速し、1ドル=100円突破が目前に迫っている。
 円相場は4月22日、国際外国為替市場で一時1ドル=99円98銭を付けた。
 海外の投資機関は、1ドル=100円の突破は時間の問題で、1ドル=105円まで円安が進む可能性もあるとみている。

 日本企業が円安を追い風に活力を取り戻している一方、韓国企業はウォン高で価格競争力が低下し、輸出市場で苦戦を強いられている。
 朴槿恵(パク・クンヘ)政権が経済最前線の体制を整える前に、韓国経済が円安攻撃を受けた格好だ。

 円相場が1ドル=100円をうかがう展開となったことから、同日の日経平均株価は前週末比1.89%高の1万3568円37銭を記録。
 先月11日の年初来高値(1万3549円16銭)を更新した。
 トヨタ自動車の株価は前週末比1.3%高となった一方、韓国の現代・起亜自動車は円安で大きな打撃を受けている。

 トヨタの米国市場での1-3月期販売台数は、1ドル=80円ほどだった前年同期に比べ4万2160台増加した。
 昨年4-6月期以降、今年1-3月期まで4四半期連続で50万台以上を販売している。
 これに対し、現代自と起亜自の米国での1-3月期販売台数は、前年同期比1万371台減少した。
 昨年10-12月期から2四半期連続で販売が30万台を下回っている。
 円が対ドルで1年間に25%ほど下落し
 日本車の価格が安くなった一方、韓国車は相対的に高くなったためだ。

 自動車だけではない。
 海外で日本企業と競合する韓国企業はあちこちで円安のあおりを受けている。
 韓国にとって最大の輸出先となる中国では、日本企業が突然安値を提示して入札を勝ち取るケースが相次いでいる。
 韓国のある中小半導体機器メーカーは先ごろ、中国・蘇州の第8世代液晶パネル工場への半導体機器納入をめぐる入札に参加したが、日本のメーカーに敗れた。
 業界関係者は
 「1年前には韓国製品が日本の製品に比べ10%以上安く、性能も高いため入札で劣勢に立つことはなかったが、最近はむしろ日本企業が韓国の製品に比べ10%以上安い製品を引っ提げ入札を勝ち取るケースが増えている」
と語った。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/05/08 13:26
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/05/08/2013050801240.html

円安対策に消極的な韓国政府の経済担当グループ
国際社会の批判を恐れ、為替市場への介入を自制

 1ドル=100円の大台が間近に迫る中、この円安ドル高傾向が韓国経済の不安要素として急浮上している。
 だが、ヒョン・オソク副首相(経済担当)をはじめとする韓国政府の経済担当者たちは、深刻な状況にあることを認識しながらも、これといった対策を打ち出せずにいる。
 ヒョン副首相は先週、米国ワシントンで行われた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で円安に歯止めを掛けようとしたが、何ら成果を得ることなく帰国した。
 日本が
 「アベノミクスが国際社会から認められた」
と喜び勇んだのとは正反対だった。

 外国為替市場に直接介入し、レートを調節しようとしたものの、国際社会から批判を浴びるだけで、輸出企業に対する資金の支援なども国際社会のルールに反する恐れがあるため、他国の視線ばかり意識している、と指摘する声が出ている。
 実際、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は発足以来、市場と親和的な為替政策を掲げ、市場への介入を自制している。
 李明博(イ・ミョンバク)前政権が輸出をめぐる競争力の維持という大義名分の下、ウォン安政策を実行したのとは対照的だ。

 円安傾向を受け、韓国政府が最近打ち出した政策を見ると、政府の対処がどれだけ消極的なのかが見て取れる。
 今月1日、企画財政部(省に相当)は
 「最近の円安傾向への対応策」を発表したが、その主な内容は次の三つだ。

①.一つ目は、関係機関が合同で対円レートを常時監視する体系を整備するというものだ。
 だがこれは、対策というよりは、日常的な為替レートのモニタリングを強化するというレベルにすぎない。

②.二つ目は、中小の輸出企業に対し、これまでよりも金利面で有利な条件で融資を行うというものだ。
 政府はひとまず、政策金融公社を通じ、円安により損害を被った企業に対し総額1000億ウォン(約88億円)の融資を行う方針を打ち出した。
 輸出企業に対する保証の満期を1年間延長し、また韓国輸出入銀行と政策金融公社が、すでに決定していた輸出資金の支援のうち60%以上を今年上半期に実施するという内容も盛り込まれている。
 だが、このような措置は、企業が受けた莫大(ばくだい)な損害を考慮すると微々たる水準で、円安による企業の収益性の悪化を解決する根本的な対策にはなり得ない。

③.三つ目は、韓国政府が日本向けの輸出企業のため、日本国内に合同物流センターを設けるなど、インフラの構築を支援するというものだ。
 だがこれも、恩恵に浴する企業は極めて限定的だ。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/05/08 13:22
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/05/08/2013050801215.html

進む円安、韓国の輸出はどうなる?
鉄鋼マイナス16%、石油化学はマイナス14%

 円安が韓国経済にとって大きなマイナス材料として作用している。
 現代経済研究院は円が4月時点での1ドル=96円台から今後100円前後にまで安くなった場合、韓国全体の輸出が3.4%ほど減少すると予想した。
 円安になれば日本企業は輸出の収益が改善し、それに伴って海外市場での韓国製品の価格競争力が低下するからだ。

 これがもし1ドル=110円台にまで円安が進めば、韓国の輸出は11.4%にまで減少する見通しだ。
 分野別のマイナス幅を見ると
 鉄鋼が16.2%、
 石油化学14.0%、
 機械11.7%、
 IT(情報技術)10.8%、
 自動車8.4%
など、日本企業と激しい競争を繰り広げる分野ほど輸出の大幅な減少が予想されている。

 産業研究院が2000年から12年までの為替レートと輸出増加率の関係を分析したところ、
 「ウォンが円に対して1%高くなれば、韓国の輸出は0.51%減少する」
ことが分かった。
 またその影響は1年後に0.47%、2年後に0.50%と徐々に表れてくるという。

 韓国経済が円安の影響を大きく受ける理由は、韓国企業と日本企業が世界市場で競争するケースがこれまで以上に多くなっているからだ。
 現代経済研究院の価格競争力分析によると、韓日両国の企業は機械、IT、自動車など多くの分野で激しい競争を繰り広げている。
 同研究院のチュ・ウォン氏は
 「韓国と日本製品の間で品質格差が縮まっているため、為替の変動によるわずかな価格差が両国の輸出増減に大きな影響を及ぼしている」
と分析した。
 そのため輸出企業はどこも円安の進行を懸念している。
 大韓商工会議所が輸出企業500社を対象にアンケート調査を行ったところ
 「円安により海外市場でのシェア低下を心配する」
と回答した企業は62.1%に達した。

 韓国の2月の輸出額は1年前に比べて8.6%減少し、3月の輸出増加率はわずか0.4%にとどまっている。
 専門家はこれも円安が大きな原因として作用していると指摘した。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/05/08 13:25
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/05/08/2013050801231.html

韓国製品、円安で日本より10%割高に
中小企業は存続の危機

 首都圏にある半導体設備メーカーのA社は先月初め、中国で考えられない経験をした。
 中国メーカーが発注した半導体設備の入札に参加したところ、A社の製品よりも日本の製品の方が25%も安く入ってきたためだ。
 A社の社長は
 「どうやって日本製品がそんなに安く入ってきたのか、いまだに理解できない」
と首をかしげた。

 1、2年前まで日本製品は韓国製品よりも10%以上高かった。
 韓国製品の性能は日本製品に比べてそれほど劣るわけではなかったが、何といっても値段が安く、コストパフォーマンスの高さが決め手となり、受注に成功してきた。

 ところが今では状況が完全に逆転してしまった。
 昨年9月から円安が急速に進行し、
 わずか8カ月の間に円は30%以上も安くなった。
 そしてこれはそっくりそのまま日本企業の価格競争力へとつながった。
 「円安ショック」は本格的に韓国国内の輸出企業を直撃している。
 年初に専門家は「円安が国内産業に与える影響は限定的だ」と予想していたが、輸出現場では自動車や鉄鋼、電子部品、素材・機械産業などあらゆる産業で日本企業の逆襲が現実化している。

■日本と競合する輸出産業は打撃

 世界市場で競争力を誇っている大企業にとって、円安による影響は現段階ではさほど大きくない。
 しかし、世界的な競争力を持ち合わせていない中小企業にとっては深刻な事態だ。

 京畿道安山市にあるB社は、自動車部品の製造に必要な金型を生産し、欧州や日本への輸出で利益を上げている。
 同社の代表は
 「これまでの貯蓄を全て使い切る覚悟で『泣く泣く』輸出している」
と厳しい現状について説明した。
 昨年下半期までは、韓国製の金型は日本製よりも20%ほど安かったが、その後円安が進み、今では韓国製が日本製よりも10%以上高くなってしまった。
 この代表は
 「今年に入って海外バイヤーが続々と日本のメーカーと契約を結び、新規の注文が30%も減った。
 バイヤーたちは、日本と同水準まで価格を下げるよう要求してくるが、価格を下げれば赤字は避けられず、だからといって値下げできなければ取引先を失う恐れがあるため、どうすることもできずに困っている」
と話す。

 輸出の「花形」だった金型業界は最近、どこも同じような苦境にあえいでいる。
 円安による注文の減少と採算性の悪化で、倒産の危機に直面している企業が続出している。

 日本に輸出している企業にとって、その影響はさらに大きい。
 洗浄剤を日本に輸出している群山のC実業は、今年に入って円安のため「赤字輸出」を余儀なくされている。
 日本の「100円ショップ」で販売している繊維脱臭剤の製造を手掛ける同社は、輸出が増えれば増えるほど赤字幅が拡大する。
 同社の代表は「繊維脱臭剤を1個51円で輸出しているが、昨年は円高のおかげで1個輸出すると750ウォンになったのに、今年は560ウォンにしかならない」と話す。

■「円安による打撃、韓国では赤字企業が続出」

 農業機械業界も状況は変わらない。
 韓国製と日本製の農業機械は欧米の中・小型農業機械市場で激しい競争を繰り広げている。
 理由は、農業方式が稲作や畑作中心という点、家族農業の形が多いため大型農業機械よりも中小型機械の方が人気が高い点、などが共通しているためだ。

 しかし、韓国国内の農業機械輸出業者は円安のために赤字覚悟の競争を余儀なくされている。
 韓国農機械工業協同組合のハン・サンホン理事長は
 「この業界は同じ顧客と長期にわたって取引していくことが鍵となるため、赤字になるからといって輸出を中断することができない。
 ただし1ドル=100円以上の円相場が続くことになれば、今年末には農業機械輸出業者の90%以上が赤字を計上することになる
との見通しを示した。

 産業現場では「問題はこれから」だという。
 今のところはまだ正常な輸出が行われており、外見上は特に問題がないように思われる。
 しかし、景況は徐々に悪化してきているというのが現場を行き来する営業マンたちの見方だ。
 スマートフォン部品メーカーの社長は
 「日本の競合メーカーの低価格攻勢に対抗するために、年内には値下げを迫られるだろう。
 こうした状況が続けば、年末には韓国の輸出製造業者の中にも利益を出せなくなってしまう所が続出するだろう
と不安を隠せない。

 世界最大の自動車市場である米国では、日本メーカーの躍進が韓国自動車メーカーの収益性を悪化させるといった兆候が見受けられている。
 IM投資証券のリュ・ヨンファ研究員は
 「日本の自動車メーカーが昨年下半期から大々的なインセンティブ(販売奨励策)実施によるマーケティング攻勢に乗り出した。
 韓国メーカーも販売台数を維持するためには同じような水準のインセンティブを実施するほかなく、これによって今年の1-3月期には売上高が10%以上は減少する」
との見方を示している。